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夜8時からの予約を受け付けるか否かについて考える


  そこそこ繁盛している飲食店を経営されている皆さんにとって、「夜8時からの予約を受け付けるか否か」というのは、とても難しい問題だと思います。

 どの程度の客単価の顧客層を狙っているかにもよりますが、お店の回転率や閉店時間の問題を考えると、明らかに席が早くから埋まりそうな月末の木曜日、金曜日あたりの「夜8時からの予約」は避けたいところでしょう。実際、繁盛している強気な飲食店になればなるほど「金曜日の予約はお断り」というところもあります。

 ただ、忙しく働いていて、それなりの所得があり、そこそこの高客単価が期待できそうな皆さんが集まる食事会などは、7時や7時半スタートが難しく、8時スタートというのも珍しくないと思います。だとすると、8時スタートでそこそこの人数の宴会受注を断ることによる機会ロスもまた、大きいように思います。

 このジレンマに対して、各店の店長さんは、どのように対処したらよいでしょうか。

 今、お店がかなり繁盛していて、まったく客に困っていないということであれば、「一律に木曜、金曜の夜8時以降の予約は断る」という選択もありだと思います。ただし、潜在的な優良顧客に関する予約に関しては、店の経営の持続性の観点から、「ある程度の無理を聞いてあげてでも取りにいく」ということも商売上は、重要であるわけです。

 だとすると問題は、「予約内容からどのようにして優良顧客を判別するか」ということになるわけですが、飲食店の一般的な予約電話に対する対応は以下のような感じでしょうか。

顧客:「お店の予約をしたいのですが…」
店員:「お日にちと、人数と時間を教えて下さい」
顧客:「○日、4名で夜8時くらいからでお願いします」
店員:「只今確認して参りますので、しばらくお待ち下さい。」
店員:「あいにく8時からのお席は一杯でして、7時からのお席であれば受付できそうなのですが…」
顧客:「それなら結構です。」

 人間の腹時計を考えると、7時から食事ができるのであれば、7時から予約を入れていると思うのです。ですから、上記のような事例において、オペレーションマニュアルにある通りに7時とか、7時半に予約を前倒しするように誘導するアプローチは、「店側の都合」を前面に押し出してしまうようで、逆効果であるような気がしてなりません。

 これを以下のように変更するのはどうでしょうか。

顧客:「お店の予約をしたいのですが…」
店員:「お日にちと、人数と時間、それから、過去にご来店頂き、お名刺を頂戴しているお客様であれば、お名前を頂戴できますか、もしご来店頂いているのであれば、弊社のお客様リストを確認させて頂いた上で、できる限り調整できるように致しますので。」
顧客:「○日、4名で夜8時くらいからでお願いします。私の名前は○○です。」
店員:「○○様、只今確認して参りますので、しばらくお待ち下さい。」

(現時点で当日来店者用の空席が確保されており、実際に予約ができる場合)
店員:「○○様、4名様ですと、通路側で多少窮屈になってしまいますが、8時からお席をなんとかご用意できそうです。ビール一杯サービス致しますのでこちらの御席でいかがでしょうか。(顧客の期待を満足させる答えを用意しながらも、最も埋まりにくい席に誘導する)」
顧客:「それで結構です。よろしくお願いいたします」

(現時点で全く空席がなく、予約ができない場合)
店員:「○○様、4名様ですと、その日はどう調整しても、難しそうです。とても残念ですが、またの日にお越しください。」
顧客:「わかりました」

 実際に、顧客情報と販売情報をつなぎ、名前の頭文字を入れただけで瞬時を識別し、客質を判断できるような予約データベース(DB)が、店舗内に構築できていれば理想ですが、そういったものがなくても、アルバイトさんが枕詞を一つ加えるなり、電話応対を少し工夫するだけで、顧客の質の識別がある程度できるように思います。実際にもう少し進んだ大規模有名店ですと、常連の優良顧客にだけ教えるWebに開示されているものとは異なる電話回線を設定し、この電話番号にかかってきた顧客だけは、店長か副店長が必ず対応し、無理を聞いて優先的に予約を入れるというようなこともやっていると聞いたことがあります。

 私はこれまで、飲食関係のビジネスを見る機会が何度もありましたが、顧客情報と客単価情報をスムーズにつなげて、瞬時に顧客の質を見分けられるようなDBを構築し、予約受付業務などに活用している店には遭遇したことがありません。ただ、既に顧客情報を持っていて、当該顧客の店舗への誘導もできるぐるなびやOpentableあたりが、リアルタイム予約システムと共に、この手のDB構築サービスをASPサービスなどで店舗に月額課金方式で提供すれば、それなりに需要があるように思うのですが、どうでしょうか。

 飲食店の客質判定のための上記以外の「気の利いた質問」など、皆様のアイデアを募集します。

| cpainvestor | 23:55 | comments(6) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment
cpainvestorさん

いつも楽しみに拝見しております。

サラリーマン時代、会社が新たに立ち上げた高級ブランドに顧客データベースを導入することになり、そのプロジェクトマネージャーを務めたことがあります。

システムの設計段階で「ショールームに来店された(あるいは電話をいただいた)お客様の名前を入力すれば属人的な情報や購買履歴が表示され、新入りのスタッフでも気の聞いた対応ができるようにしてほしい」という要望がありました。

何とか、その要望に対応することはできたのですが、データ入力側にも相応のスキルが求められ、運用において様々な問題点が発生しました。

例としては、今まで紙のカードに走り書きしていたものを、検索できるような形でデータ入力する必要があったため、スタッフの退社時間が大幅に遅くなったことが上げられます。


今回、書かれている「夢のようなデータベース」ですが、実際に運用していくのは、かなり難しいのではないかと感じます。

なるべくパートやアルバイトを使わず、正社員中心に質の高い対応ができるようにすべきでしょうね(そもそも、まともにできていないオペレーションをシステム化しても上手くいくはずがないです)。

とはいっても労働集約型産業では、そうはいかないのかもしれませんが。
Posted by: 角山智 |at: 2009/07/30 7:06 PM
アドバイザーにSEと銀座のクラブのママとかが居れば、ノウハウ+システムを融合させて作れない事は無さそうですね。
こういうのはやってるところはあっても個人の能力とかやる気に頼っている部分が大きいと思いますので。

一度作れば他店にも売った方がいいという意味ではぐるなびあたりがやれば、確かに一番儲けられそうなビジネスに思います。
特に単価の高いお店や予約が主なお店は2:8の法則もありますので、導入すべきでしょうね。
Posted by: ny |at: 2009/07/30 11:01 PM
予約時に会社名を聞くと良いかと思います。
会社経由であれば、今後忘年会や新年会につながりますので、無理してでも予約を受けるべきだと思います。
Posted by: フリーター |at: 2009/07/31 11:39 AM
角山様

少しご無沙汰しております。ここのところ、だいぶバリュー小型株が上昇してきましたので、元祖バリュー投資家の角山様もお忙しいのではないかと推察します(笑)。

実体験に基づく貴重なご意見、ありがとうございます。やはり、顧客情報と購買情報をつなぐスムーズなDBというのは、「作れそうでなかなか作れない」というものなのかもしれませんね。

そういう製品こそ、うまくパッケージ化できれば、売れると思うのですが。個人情報入力の手間は、どうせポイントカードでかけているでしょうし、購買情報はPOSから取れると思うのですが・・・。アパレルではできても飲食では費用対効果の面から難しいのかもしれませんね。

個店主義でいくなら、やはりヒトを教育するということが王道なのでしょうね。レバレッジはききませんが。
Posted by: cpainvestor |at: 2009/08/02 1:00 AM
ny様

いつもご訪問ありがとうございます。

単価の高いお店は、アルバイトの受け答え一つでも、大分機会ロスをするリスクがあるように思います。

確かに腕の立つSE+銀座のママの発想は大事になるでしょう。そういえば、銀座のママや新地のママも最近はだいぶ廃業していると聞きましたが。


Posted by: cpainvestor |at: 2009/08/02 1:04 AM
フリーター様

確かに、予約時に会社名を聞くというのも「法人接待需要、宴会需要」狙いのお店なら有効な戦略かもしれませんね。

この手のアイデア、他にもいろいろありそうですね。
Posted by: cpainvestor |at: 2009/08/02 1:09 AM








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